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【生命の海科学館】 講演内容紹介

記事ID:0068416 更新日:2020年2月19日更新

地磁気誕生と生命への影響  星 博幸氏

講演会写真

 我々は普段の生活で地磁気を意識することはありませんが、生命が地表で生活できるのは地磁気が存在するからです。本講演では、地球の生命誕生や進化に役割を果たしてきたと考えられる地磁気について 三つのテーマでお話します。

 

1.     地球は大きな磁石である

 地球は、北極がS極、南極がN極になっている一つの大きな磁石といえ、地球の磁気を地磁気(地球磁場)と呼びます。地磁気の形は磁力線で表されますが、地球の中心に棒磁石を置いたときにできる形と似ています。実際に棒磁石が存在するわけではなく、地磁気の発生源は、地球内部の外核と考えられています。外核は温度が4,000から5,000℃にも達する主に鉄から成る金属の流体です。金属流体が地磁気の中を流れることによって電流が発生し、その電流によって地磁気が生じていると考えられています。つまり、地磁気とは巨大な電磁石(地磁気ダイナモ)といえます。

 

2.     地磁気バリアの中で、地球の生命活動は営まれている

 地磁気の影響が及ぶ範囲は、地球周辺の宇宙空間にまで広がっていて、地磁気の勢力範囲を地磁気バリア(地球磁気圏)と呼びます。地球の全生命は地磁気バリアの中にいることになり、地磁気バリアは、銀河宇宙線(陽子やアルファ粒子など)や太陽風(陽子や電子)が地球へ進入することを防ぐ役割を果たしています。

 地磁気バリアがないと、“太陽風が地球に直接届き、その影響で大気がほとんどなくなってしまう”、“大気の性質が変化し、オゾン層の破壊が進行して、地表に届く紫外線量が増加する”、“生命の遺伝子情報を担うDNAに異常が発生したり、突然変異が増加したりする”、などの仮説が挙げられています。

 

3.     「地磁気の誕生や変化」と「生命の誕生や進化」には、関連があったのだろうか?

 結論から言うと、地磁気誕生と生命誕生の関連性については、明確な結論は出ていません。

 生命(原始細胞)の誕生についてですが、必要と考えられる条件は、水、タンパク質、脂質、核酸、及び活動を維持する熱エネルギーです。これらの条件を考えると、海底の熱水(200から300℃)が噴出するような環境が、生命誕生の場であった可能性が高く、硫化水素を含む現代の熱水噴出孔付近からも、超好熱菌と呼ばれる原核生物が発見されています。又、遺伝子や化石の研究から35から40億年前に最初の生命が誕生したと考えられており、30から40億年前の「熱水の通路」から、有機物が存在していた可能性を示す化学的な痕跡(同位体の分析)が見つかっています。最古の化石は、 約35億年前の岩石 から発見されています。

 地磁気誕生の時期は解明されておらず、原始地球の段階から地磁気が存在した可能性が考えられますが、一方で月面の化学的な痕跡から、地球形成初期には地磁気が存在しなかった可能性も指摘されています。現在、古い岩石の古地磁気記録から、地磁気の誕生を探る研究が進行中で、最古の古地磁気記録は約34億年前です。

 

 最後に地磁気の逆転現象について触れます。地磁気はいろいろな時間スケールで変化し、地磁気逆転と呼ばれるN極とS極がひっくり返ることもあります。地磁気逆転にかかる時間は数千年から1万年ほどを要し、最後に起こった逆転は約78万年前です。地磁気が逆転している最中、地磁気は通常の1/10以下に弱くなることが推測されています。その時、ある種の生物は影響を受けた可能性が挙げられていますが、生命全体へ深刻な影響が及んだ可能性は低いと考えられています。