インカクジラ化石　Incakujira anillodefuego

記事ID：0196264 更新日：2024年1月1日更新

インカクジラ全身骨格

南米のペルー・アレキパ州の、今からおよそ750万年前の地層から発見されたクジラの化石です。
この大きな頭の顎の内側を見ていただくと、歯がないことが分かります。このクジラはヒゲクジラのなかまで、獲物をとらえる歯の代わりに、小さな生物を海水からこし取って食べるためのヒゲ板という器官を、上あごに備えていました。下あごの内側の岩にある細かい縞模様は、ヒゲ板の痕跡です。大きく口を開け、あごのうねを広げて大量の海水ごとプランクトンや小魚をとりこみ、歯ブラシのように密生したヒゲ板ごしに水を吐き出して、ヒゲ板に引っかかった生物を丸呑みしていたのでしょう。

化石クジラが新種に認定されました！

2016年10月、生命の海科学館1階エントランスに展示中のクジラの化石が新属新種に認定され、「インカクジラ」と名づけられました。

ペルー南部サカコ盆地の後期中新世（およそ750万年前）のピスコ層産ヒゲクジラ類の全身骨格化石です。化石として残りにくいクジラヒゲの痕を含め、ほぼ全身の骨格が揃っており、非常に保存状態が良い化石です。

2016年10月、国立科学博物館の甲能直樹博士（地学研究部生命進化史研究グループ長）らの研究の結果、新属新種に認定され、世界に一つしかないホロタイプ標本（完模式標本＝種の記載に際して分類同定の基準とする、世界唯一の標本）に指定されました。

新種認定にいたる概要

1990年にペルー共和国アレキパ州の上部中新統ピスコ層（およそ750万年前）から発見された全身骨格化石を、1998年に蒲郡市生命の海科学館が購入し、1999年開館時より一般に公開しています。

2015年2月、国立科学博物館の甲能直樹（当時研究主幹、現在研究グループ長）とFelix G. Marx（当時国立科学博物館外国人特別研究員，現在オーストラリア・モナシュ大学研究員）が新種の可能性を指摘しました。同年6〜10月にかけて、科学館職員・市教育委員会職員の協力の下、甲能博士らは当該化石の写真撮影と詳細な記載、計測、耳骨周囲の剖出を実施しました。

2016年10月、甲能博士らの研究の結果、頭骨の形態などから新属新種に認定され、当館の化石は分類学上のホロタイプ（完模式標本）に指定されました。学名のIncakujira anillodefuego には「ペルーと日本を結ぶインカのクジラ」という意味が込められています。

動物命名法国際審議会（ICZN）のZoobankへの命名登録は以下のとおりです。

　新属名Incakujira: LSID,urn:Isid:zoobank.org:act:AB0A1646-D7BC-4333-A2D2-F9D3F611B1C3

　新種名anillodefuego: LSID,urn:Isid:zoobank.org:act:5BE0B9B5-AA86-4F54-B0C7-D8279044B064