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科学館スタッフによる広報がまごおりコラム「生命の海から」
裏起毛
暖かさを感じる日が増えてきて、ほっとしますね。私は寒さに弱いので、冬の間、上着は裏起毛のものを着がちで、常に暖かくして過ごしていました。
そんな私たち人間と同じように冬を越す生きものの中にキタテハというチョウがいます。夏に成虫になるものと秋に成虫になるものがいて、この時期に見られるのは、冬を越したあとの秋型と呼ばれる成虫がほとんどなのですが、このキタテハ、実は冬を乗り越えるための面白い工夫が身体にあるんです。
チョウやガを捕まえたことのある方は分かると思いますが、はねには鱗粉という粉のようなものが付いています。この鱗粉、様々な色や模様を生み出すだけでなく、はねの強度を高めたり、水をはじいたりする役割も持っています。さらに、なんと冬を越す秋型のキタテハは、はねの裏の一部の鱗粉が毛のようになっていて、夏型のものより量も多く、人間でいう裏起毛の上着のようになっているのです。寒さなど感じていないように見えますが、人間と同じように、できるだけ暖かいものを身に着けて冬を乗り越えるんですね。このしくみを知ったときには、特に気にも留めていなかったキタテハをぐっと身近に感じました。
私たちは裏起毛の上着はもう脱ぐ季節ですが、チョウたちはどうするのでしょうか。興味は膨らみます。まだまだ生きものにはそれぞれの季節を過ごす工夫が隠されているかもしれません。ぜひ探してみてください。
キタテハの鱗粉。左側が裏面で毛が生えている様子はまさに裏起毛!
生命の海科学館 小松薫
(2025年4月1掲載)
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