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科学館スタッフによる広報がまごおりコラム「生命の海から」

彩(いろど)る石たち
ほんのり輝くような白い頬、力強い瞳の輝き、つややかな花びらのような唇。17世紀オランダの巨匠フェルメールの絵画「真珠の耳飾りの少女」の、その生き生きとした美しさを引き立てているのが、彼女がまとう鮮やかな青色のターバンです。色の源はウルトラマリン・ブルーという顔料で、海(マリン)を越えて(ウルトラ)遠くアフガニスタンから運ばれてくることからこの名が付いたといわれています。ラピスラズリと呼ばれる石を砕いたものが原料で、石に含まれる青金石という鉱物が、この深い青を生み出しています。光沢や手触りまで伝わってきそうな美しい布地は、実は石で描かれているのです。
日に焼けて色あせてしまう染料とは異なり、石の色はとても長持ちします。また鉱物そのものが発色している場合は、細かく砕いても色鮮やかなまま。そのため、昔から顔料として重宝されてきました。千数百年前に造られたキトラ古墳の壁画や、2万年ほど前に描かれたフランスのラスコー洞窟の壁画にも鉱物が使われていて、今もその彩を残しています。
時を越えて鮮やかさを保ち続ける鉱物の色の源は、実はその微細な構造です。ミクロよりもっと小さなナノの世界の原子たちが絶妙なバランスで組み上げているスクラムが、色を生み出しています。鉱物の美は、人の手の届かない微小な世界の理が、確かにそこに存在していることの証なのです。

真珠の耳飾りの少女と青金石の結晶
生命の海科学館 館長 山中敦子
(2025年11月1掲載)
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