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【生命の海科学館】神門 正雄氏 講演内容紹介

記事ID:0073918 更新日:2020年2月19日更新

2012年夏の企画展 特別シンポジウム「メタンハイドレートと海洋資源」

 基調講演:メタンハイドレートを中心とした海洋資源開発について 神門 正雄氏

1.我が国における海洋の関わり

 日本の国土面積は約38万km2で世界第61位ですが、領海・排他的経済水域は447万km2あり世界第6位です。この広い水域に、メタンハイドレート等のエネルギー資源や海底熱水鉱床等の鉱物資源が分布しています。

 海と私たちとの関わりを考えた場合、従来からの海運や漁業に加えて、近年は工場や発電所の立地による臨海部での活動が挙げられます。更にこれからの時代は、海洋エネルギーや鉱物資源の開発、波力等の再生可能エネルギーの利用が期待されています。

 

2.メタンハイドレート開発の現状

 日本のエネルギー自給率は、原子力を除けば国産の石油・ガスと再生可能エネルギーをあわせて僅か7%であり、大部分を海外からの輸入に頼っています。世界第3位のエネルギー消費国でありながら、自給率が低いわけです。このような状況で、メタンハイドレートは新しい資源として脚光を浴びてきました。

 メタンハイドレートとは、メタンガスと水が低温・高圧の状態で結晶化した氷状の物質で、1m3に約160~170倍の体積のメタンガスが含まれています。メタンガスは、石油・石炭に比べ燃焼時のCO2排出量が少なく、クリーンエネルギー資源として注目されています。日本の「東部南海トラフ海域」に大規模なメタンハイドレートの賦存量が推定されており、他の日本周辺海域の資源量とあわせると、日本の天然ガス消費量の100年分が存在すると推測されます。ただし、石油・天然ガスのように自噴しないため、回収技術の開発が必要となります。これまで、固体ではなく、地層内で分解、メタンガス化して、気体を回収する技術が検討されてきました。分解する手法には、加熱法(温水循環法)と減圧法がありますが、両法を試験した結果、減圧法を中心に生産回収していく方針です。

 我が国は平成13年に「メタンハイドレート開発計画」を策定し、メタンハイドレートを経済的に掘削・生産回収するための本格的な研究開発に着手しました。フェーズ1、2、3の3段階に分け、平成30年度の商業的産出を目指しています。資源量調査、産出法の検討等のフェーズ1の成果を受け、現在はフェーズ2の段階です。ここでは海洋産出試験を中心とした実証的な研究を実施しており、平成25年1~3月に東部南海トラフの第二渥美海丘にて海洋産出試験を予定しています。平成28年度からのフェーズ3では、商業化の実現に向けた技術の整備、経済性評価、周辺環境への影響を検討します。

 

3.「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」(平成21年3月策定)のポイント

 この計画は経済産業省が、メタンハイドレートも含めた海洋資源の開発について策定したものです。メタンハイドレート以外の海洋エネルギー・鉱物資源としては、海底熱水鉱床(有用金属)、石油・天然ガスが挙げられます。

 海底熱水鉱床は、沖縄や小笠原海域に存在していることが判明していますが、現在は採鉱技術の開発段階です。平成30年度の商業化に向けて、資源量の把握、周辺環境への影響を検討していかなければなりません。

 又、石油・天然ガスは既に新潟沿岸で生産を実施していますが、日本周辺には石油・天然ガス賦存ポテンシャルの高いエリアが存在しています。それらの海域における基礎物理探査等の基礎調査を実施しています。

 

4.海洋エネルギー・鉱物資源開発に向けた法律・環境の整備

 我が国の資源開発に関する法律は昭和25年に制定された「鉱業法」に基づいています。しかし、技術的能力を求める規定がないため、開発主体の適切性を担保できないなどの問題点がありました。合理的な海洋開発を行うため、平成24年1月に一部改正され、最も適切な開発主体を審査・選定し、鉱業権を付与することができるようになりました。

 又、経済水域を確保するために低潮線保全区域を政令により185区域指定しています。その内、水域を規定する上で重要な離島区域が137存在しています。更に管轄海域を拡大するため、国連海洋法条約に基づき大陸棚の延長を大陸棚限界委員会へ申請し、本年4月に勧告を受領しました。 これら法整備や水域整備もメタンハイドレートの技術開発に繋げていければと考えています。