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【生命の海科学館】 講演内容紹介

記事ID:0069901 更新日:2020年2月19日更新

生物の大量絶滅と進化  松岡 敬二氏

講演会写真

 地球生命史において、大量絶滅はカンブリア紀以降5回起きています。絶滅を乗り切り、現代にまで子孫を存続させている生物種の生き残り戦略を考えます。

 1回目の大量絶滅はオルドビス紀末(約4.4億年前)に起きました。原因は海水準変動と考えられており、海生生物の属の45~50%が絶滅したとされます。腕足類のシャミセンガイの仲間はこの絶滅を生き残り、現生11種がいます。生き残った理由としては、干潟のような外敵の少ない場所に生息していたことが挙げられます。

 2回目の大量絶滅はデボン紀末(約3.6億年前)で、海水準と気候変動が原因とされています。海生動物の属の47~57%が絶滅し、その中には大型魚類のダンクルオステウス(板皮類)がいました。一方、軟骨魚類のサメ類は生き残り、以後の繁栄に繋がります。サメ類は電気受容感覚であるロレンチーニ器官を持っていたことが有効に働いたと考えられます。又、卵胎生であることも繁殖の多様性という観点から有利であったと思われます。

 デボン紀の後、カイエビ類とカブトエビ類はほとんど姿を変えずに現在も生きていますが、生息環境が悪化すると休眠クリプトビオシスや休眠卵を形成するなどの戦略が知られています。

 5大絶滅の中でも最大級といわれている3回目の大量絶滅はペルム紀末(約2.5億年前)に起きました。数千年~60万年間に地球上の種の96%、海洋動物の属80%が絶滅し、特に三葉虫はここで完全に絶滅しました。原因としては、シベリアの溶岩台地の噴火による酸性雨(陸上生物に影響)、メタンハイドレードの崩壊による海水の温暖化(海生生物に影響)、海退による浅海域の消失(三葉虫、サンゴに影響)などが考えられています。巻貝のオキナエビス類は、この絶滅で打撃を受けながらも種を残し、現生15種です。深海域での生息が絶滅を逃れた要因と考えられます。

 4回目の大量絶滅は三畳紀末(約2億年前)に大西洋火山活動による温暖化が原因で起きました。海生生物の属の43~58%が絶滅し、 アンモナイト類 の激減や腹足類、二枚貝、腕足類にも影響を与えました。爬虫類では乾燥にも強い繁殖様式を持つグループが生き残っています。

 5回目の大量絶滅は白亜紀末(約6,500万年前)に隕石衝突により起きました。衝突による火山活動や酸性雨のため、属の46%、種の76%が絶滅しました。爬虫類の鳥盤目、竜盤目、 首長竜 目が絶滅しています。哺乳類や鳥類は毛や羽がケラチンであることが有効に働いたため生き残っています。 

 5大絶滅を乗り切り、“生きている化石”と呼ばれている生物は、動物では頭足類のオウムガイ、哺乳類のカモノハシ、二枚貝類の三角貝、肉鰭類の シーラカンス などが挙げられます。オウムガイやシーラカンスは深海での生息、カモノハシは蹴爪に毒を持つことと、大陸移動の影響が少なかったオーストラリア東部に生息していたことが生き残った要因として挙げられます。三角貝は潜る速さと殻の厚さです。

 植物では、ジュラシックツリー、イチョウ、 メタセコイア などが生きている化石です。特にメタセコイアは、化石種が記載された後に現生種が発見されたこともあり、その代表格です。現在では遺存的に一地域にのみ生息しています。

 人類は、石器を発明した300万年前から火の使用を始めた100万年前までは多様な種が生存していましたが、現在、ヒトはホモ・サピエンスの1種のみです。個体数は70億人で、文明を持ち地球全域の環境を改変しています。ヒトの影響により種の多様性は減少しており、1日に4万種が絶滅の危機に晒され、5大絶滅に続く絶滅の時期といえます。種の多様性を維持するとともに自然・環境の多様性を継続することが必要です。

 人類1種のみによる文化多様性の低下や、出生率の低下現象は、生物進化のパターンに当てはめると、種としての繁栄ピークを過ぎているといえます。人類は未来に向けて、種内の均一性を避け、多様性が下がらないようにすることが必要であり、又、“生きている化石”の生き方を考えてもいい時期かと思われます。