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蒲郡市立図書館に英文多読コーナーが設けられて1年3ヶ月が経過しました。本報では、盆休みをきっかけに英文多読を始めてみたが、どの本を読んだらよいのか迷っている、または、もっとこのコーナーを活用したいとお考えの方に、ちょうどよい英文図書を紹介したいと思います。
表1 GRの種類(略号)と読みやすさ(YL)
YL | Penguin Readers | Oxford Bookworms | Cambridge English Readers | Macmillan Readers Macmillan New Wave Readers |
0.8から0. | PGR0 (0.8) | OBW0 (0.8から0.9) | ・・・・・・・・・・ | MMR1 (0.8), MNW1 (0.8) |
1.0から1.4 | PGR1(1.0から1.4) | ・・・・・・・・・・ | ・・・・・・・・・・ | MMR2 (1.2から1.4), MNW2 (0.8) |
1.4から1.9 | ・・・・・・・・・・ | ・・・・・・・・・・ | CER1 (1.4から1.6) | MMR2+ (1.6から1.8) |
2.0から2.6 | PGR2 (2.2から2.6) | OBW1 (2.0から2.2) | ・・・・・・・・・・ | MNW3 (2.4から2.6) |
2.6から2.9 | ・・・・・・・・・・ | OBW2 (2.6から2.8) | CER2 (2.6から2.8) | ・・・・・・・・・・ |
3.0から | PGR3 (3.から3.8) | OBW3 (3.2から3.4) | CER2 (3.6から3.8) | MMR3 (3.0から3.2), MMR4 (3.0から3.2) |
Oxford Reading Tree (ORT)を読み終わったら、レベル0(YL0.8から0.9)のGRを読んでみましょう(ORTを読んでいない方は、まず、英文多読通信#2で紹介したORTを読むことをお薦めします)。ORTに比べて文字が小さいこと、挿絵の魅力が落ちることは気にせずに、PGR0を一冊手に取り、読んでみると、英文は意外に読みやすいことに気づきます。「知らない単語はほとんど無いけれど、文が硬くて単調だなあ」と思われたら、ズバリ、GRの特徴を捉えています。レベル0から2のGR (YL0.8から2.8) は、ほぼ中学校で習った基本単語だけで書かれているからです。
ただし、「多読を始めよう。」と考えて、いきなりレベル2(例えば、OBW1)のGRから読み始めることは、お薦めできません。このレベルから読み始めると、学校時代に身に付けた日本語に翻訳するクセが、なかなか抜けません。我々が、英文多読を楽しめるのは、(日本語での読書と同様に)英文から直接意味を汲み取るからで、一文一文日本語に翻訳して意味をとるのでは、1冊読む前に疲れてしまいます。英文を読んで「情景が目に浮かぶ、主人公に感情移入できる」のが読書です。騙されたと思って、挿絵の豊富なレベル0から読みましょう。
英文を直接読めているのか、(気づかないうちに)日本語に翻訳しているのか、自分では分からない場合は、読書速度を測ってみるのも、ひとつの手です。読書速度は毎分100語が一つの目安(OBW1の”The Coldest Place on Earth”なら6,300語ですから、1時間くらいで読めればOK)。ただし、頻繁に測ると、速く読もうと無理して読むようになる(これまた、疲れてしまう)ので、要注意です。
レベル0のGRで、高専の学生に人気があるのは、“The Long Road” (PGR0), “Marcel and the Mona Lisa” (PGR0), “Marcel and the White Star” (PGR0), “Girl on a Motorcycle” (OBW0), “King Arthur” (OBW0), “Sally’s Phone” (OBW0) などです(1冊あたり1,000語程度)。
このレベルになると、ジャンルによっては楽しめる本も出てきます。YLだけでなく、本のジャンルも参考に、読む本を選ぶと、より楽しく読書を進めることができるでしょう。
最も人気の高いのは、CER1です。全てオリジナルで(GRには、Retold:原作の書き直しとOriginal:GRが原作の2種類があります)、違和感(原作を知っている人が、Retoldを読むと、あっけない感じが残ることがある)が少ないからでしょうか?
例えば、“Inspector Logan”(CER1は、レベル1で楽しめるミステリーとして、人気の高い作品の一つです。その他に、日本を舞台にした“Big Picture”, (CER1), コミカルな“Help” (CER1),けっこう怖い“John Doe” (CER1)等、ジャンルも様々です。また、英文がやさしくて長い作品を読みたい人は、古典のRetoldが中心のMMR2+をどうぞ。人物紹介のページを参照しながら読むのが良いでしょう。
このレベルを読んでも消耗しなくなれば、英文多読は軌道に乗ったと考えてよいでしょう。すでに、レベル0から1の本を数十万語読んでこられたはずです。漆黒の装丁が目立つOBW1がレベル2の入り口になります。1冊6,000語前後ですから、週末に1時間で一気読みも可能です。このシリーズだけでなく、挿絵は日本人の感覚と合わないものが多いかもしれませんが、軽く流して読みましょう。Originalでは、”White Death”,“The Coldest Place on Earth”が一番人気、Retoldでは、”A Little Princess”, “The Wizard of Oz”やSherlock Holmesの2作品など、懐かしい名前が並びます。
PGR2は、映画作品のあらすじ紹介がたくさんありますが、これらは実際に観た作品を読むのがよいでしょう。古典と映画のRetoldが中心のPGR2、一番人気は”Heidi”です。
多読を続けると、英文が読めるようになるだけでなく、(別段、受験対策の勉強をしなくても)TOEIC得点が上昇します。多読授業3年目の高専学生(17から20歳)の様子から推定すると、平均的な累積読書量とTOEIC得点との関係は、おおよそ、以下のようになります。
30万語 | 400点 | 「やさしい英文なら読める」と自覚するようになる YL1.4(CER1)から2.0 (MMR2+) を無理せずに読める |
100万語 | 500点 | どのレベルの本なら読めるか、自分で判断できるようになる YL2.6(OBW2)から3.0(MMR3) を無理せずに読める 児童書(YL2.0から3.5)を読んでも、知らない単語が気にならない(飛ばせる) |
200から300万語 | 600点 | 英語圏への交換留学生(AFS等で1年間)と同程度 Darren Shan (YL5.0), Harry Potter (YL6.0) を楽しんで読み始める 英語の読書力では、平均的な留学帰りの学生より上かもしれません (最近は、200から300万語読めば難関大学の受験にも対応できるとの話も聞きます) |
文責 蒲郡市立図書館英文多読相談員(豊田高専 電気・電子システム工学科教授) 西澤 一
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