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第2回大会から、第26回大会までの各回の最優秀作品をご紹介します。
風寒き春のひと日を老い夫がわが傍に古銭をみがく 小林たつ(愛知県蒲郡市)
亡き母の戸棚に見出でし金米糖色変りせず四年過ぎたる 小林壽美(愛知県蒲郡市)
機を織る動作緩慢となりしわれ二十八年の年月思ふ 夏目冨美子(愛知県蒲郡市)
この町に小さき給油所を夫と共に守りて過ぎし二十幾年 岩瀬和子(愛知県幸田町)
雨の日の続きて蜜柑貯蔵庫に腐敗みかんの選り別けをする 小田和広(愛知県蒲郡市)
連れ立ちて節句の浅蜊取る海に春の雪降る寒しともなく 小田那美江(愛知県蒲郡市)
勝気なるわが妻あはれ寝言にて怯えし言葉いくたびもいふ 浅井浩(愛知県豊川市)
伊吹おろしひねもす吹ける給油所に長き一日を終えて帰り来 岩瀬和子(愛知県幸田町)
海埋むる土になるとふふるさとの雉住む山の日々くづさるる 神田あき子(愛知県蒲郡市)
願はくば我より先に逝きませと老いたる母に言ひて悲しむ 伊藤玖水子(愛知県名古屋市)
山火事を消しに行きたる吾子未だ夜半を還らず涅槃西風吹く 岡本美治香(愛知県蒲郡市)
コツコツとガラス戸たたき我を呼ぶ夫の指さす桜の開花 岩本甲子(愛知県半田市)
街頭募金のノルマ果して帰りゆく盲導犬の足どり早し 加藤須磨子(愛知県名古屋市)
踏み出すに惜しき雪道を容赦なく轍が朝をうごかしはじむ 畑佐恵美子(愛知県師勝町)
また一人入りきて湯桶鳴らしをり玻璃ごしに怒濤は音なく打てる 片岡昭雄(愛知県美浜町)
吾知らね地球蒼しと人の言ふその土に黄水仙しずかにひらく 水谷恭子(愛知県新川町)
飾り棚の香水壜にさす月の光ゆらめきぬ訪ひ来たるらし 朝居た江(愛知県刈谷市)
磯笛のまだあどけなき十八の海女の足裏の淡紅まぶし 小松原康生(愛知県一宮市)
亡き母の里は桑名市職人町祖父は鋳物の木型造りき 廣田早苗(愛知県名古屋市)
踏切のわが辺電車の傾ぎ過ぐ錆のにほひをかすか残して 丹下妙子(岐阜県羽島市)
唐黍を風呂敷に包み亡き祖母が汽車から降りてきさうな日和 藤林正則(北海道稚内市)
赤毛のアン降り立つときを待つやうに駅の桜の莟ふくらむ 洲淵智子(愛知県豊橋市)
今そこに人が話していたようにぽっと明るい雨の街灯 日向 勝(埼玉県桶川市)
空席のデスクに百合の供花ありてひとりひとりがひとりを想ふ 水谷すみ子(愛知県春日井市)
髪洗ふしづくに思ひ滴らせ空つぽになるまで私を洗ふ 関戸玲子(愛知県一宮市)
芦を焼く火をそだてつつ合図待つ消防士らに春の雪降る 沖村 学(大阪府大阪市)
屋根を打つ雨音聞きつつ眠りゆく意識の底に深き海あり 玉田さかゑ(愛知県豊川市)
四股を踏む力士をひょいと持ち上げて液晶テレビの角度を変える 青山その(愛知県北設楽郡)
耳遠き夫に笑ひのわけ聞かせ共に笑ひて安堵すわれは 柴田文子(愛知県知立市)
絶筆の五年日記の父の文字残りの三年われが付けをり 河野誠一郎(千葉県茂原市)
喜怒哀楽織りこむ如く五十年日々機織りてわれは過ぎこし 夏目冨美子(愛知県蒲郡市)
※第1回大会は、冷泉貴実子氏による文化講演会を実施。(演題:「藤原俊成卿と冷泉家」)
※第24回大会より、大賞2首(愛知県知事賞・蒲郡市長賞)を最優秀作品とする。
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